Two Ghosts – Harry Styles 和訳と紹介

Harry Styles メロウなスライド・ギターと甘いバラード

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「思い出そうとしている。胸の鼓動がどんな感じだったのかを。」

サウンドについて
アコースティックのバラードだ。メロディラインが渋いなあ。アメリカのカントリーやフォークソングを思い出させる。古い音楽が好きなんだろう。どことなくブリットポップっぽい雰囲気もあるけれどね。リフや間奏がスライドギターなのも渋さが出てる。

歌詞について
冒頭の歌詞 “same lips red”とあるが、やはりカントリーの古い名曲に The Same Two Lip という曲がある。「私を愛したのと同じ唇が他の人を愛している」という失恋の歌だ。そして、この曲 Two Ghosts も失恋の歌だ。心臓を失ってしまった幽霊が、胸の鼓動を忘れないようにしている。恋を忘れないようにする様を未練がましいと思うこともあるけど、とても綺麗な表現に心を奪われてしまった。てか、それより!「冷蔵庫のライトが部屋を白に染める」について!冷蔵庫の光でダンスをするのはテイラー・スウィフトの All Too Well だ!(和訳はこちら)やっぱりテイラーのことを歌ってるんだなあ。。。

5/14 追記:サビ終わりの “I just trying to remember” に関して、「思い出そうとする」 とも翻訳できるとのご指摘を戴きました。「忘れないように」と翻訳した意図としては、①”Remember” という語は 「覚えている」 というニュアンスを含むこと ②別れたあとの歌だと捉えた → まだ付き合っていた頃の記憶(幽霊) が見えている という解釈をした為です。しかし指摘を踏まえて熟考し、 「思い出そうとしている」 に修正致しました。

ポイントは「胸の鼓動を覚えているか、忘れているか」です。そして二人が失った胸の鼓動とは何か。精読して気になったのは二人とも幽霊になっている点です。恋人に振られて恋人の影を見ているというより、「恋人とはまだ一緒にいる。しかし以前とは何かが変わってきている。」という解釈の方が妥当に思えてきました。そして変化 = 幽霊になったこと。ハリー自身も楽曲について「時々何かが変化して、同じことをしていても、違うことになってしまう」と語っています。ソースはこちら(海外サイトです)。胸の鼓動 = 深く愛し合っていた頃の感情ならば、忘れてしまっているんだろうな。くるりの「ばらの花」という曲のジンジャーエールの炭酸みたいだなーと思いました。 もちろん解釈は一つではありませんし、私の解釈を押し付けないように極力意訳を排するように心がけて翻訳しています。

それでは和訳をどうぞ。

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Told You So – Paramore 和訳と紹介

Paramore “Hard Times” に引き続きリフがキャッチーなダンサブルなチューン

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「”だから言ったのに” って言いたくないの。」

サウンドについて
Hard Times” に引き続き、ダンサブルなポップチューン。昔のパンク色の影はすっかりなくなったようだ。2017年スタイルにチューニングしてきたってことだろうか。アルバム全体はどんな感じなんだろうなー。サウンド面ではサビのドラムが好み。ギターリフについていったり、ベースについていったりして、ビート感がラフになっている。

歌詞について
とりあえず一回忠告しておけば、「だから言ったのに」って言えるからね。うまくいったら褒めれば問題ないし。それをしたところで、ちょっと卑しい自尊心くらいしか満たされないけどね。どうせ言うなら、ネガティヴなことよりポジティヴなこと言おう。そしたら「だから言ったでしょ」って言えるからね。うまくいかなくても別に問題ないじゃん。

それでは和訳をどうぞ。

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Sweet Creature – Harry Styles 和訳と紹介

Harry Styles アメリカの古いフォークソング・スタイル

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「いつでも君が僕を連れ戻してくれる。」

サウンドについて
フィンガー・ピッキングのアコースティック・ギターによる伴奏だ。メロディの間の取り方も60-70年代のアメリカのフォークソングを思わせる。シンプルな伴奏ながら、コーラスを増やしたり、フェイクを入れたりして盛り上がりを作っているのも良い。間奏ですごくリバーブを掛けていて、古っぽさを払拭するアプローチなのかな、と思った。

歌詞について
Sweet Creature = “可愛らしい生き物” 。恋人のことだろう。サビの歌詞などからは、まだ付き合っている感じがとれるが、引っかかる点が二つ。①一番Aメロ「どこで間違えたかについてもう一度話し始めた(Had another talk about where it’s going wrong)」②最後のBメロ「喧嘩するたびに難しくなるんだ(It gets harder when we argue)」。関係は悪化していることに気づいているが、そこから目を逸らして、付き合っているという事実だけを見ているように思う。それは「どこに向かってるかはわからないけど どこにいるのはわかってる(We don’t know where we’re going but we know where we belong)」という一文にも現れている。

それでは和訳をどうぞ。

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Gwan – Rostam 和訳と紹介

Gwan ストリングの対位法と過去を前向きに捉える歌詞が美しい。

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「時々笑うんだ。君が僕を知っていることを考えて。」

サウンドについて
やや切なさを帯びた明るく落ち着いたストリングス主体のサウンドや、少し笑いながら優しく歌う様がとても心惹かれる。バッハの時代、まだコード進行(和声)の概念が確率していなかった頃の音楽は、独立したメロディが複数あって、ポリフォニーと言われる。そこだけに関してはオルタナティヴ・ロックって近いものがあると思うんだよね。使う楽器が変われば完成するサウンドもガラッと変わるものです。

歌詞について
“Gwan” とは “Go Away” という意味。過去の思い出を夢に喩えて歌っているのかなあ。忘れられずに何度も思い出してしまうこと。だけど引きずっているわけじゃなくて、昔のことをいい思い出だと振り返っている。一頻り思い出して、夢から覚めて、“I was happy in the city”。葉っぱが舞い落ちて、友達の車で海に向かおうとする。前向きな切なさを感じさせる歌詞、歌い方も上手に感情を表していて素晴らしい。

それでは和訳をどうぞ。

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Most Girls – Hailee Steinfeld 和訳と紹介

Hailee Steinfeld ロック系ポップスのコード感とEDMスタイル

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「モスト・ガールになりたい。」

サウンドについて
サウンド・楽曲構成はEDMのスタイル。コード感やメロディはバリバリのEDMというよりは、レディ・ガガとか、ちょっと古い感じがする。わかりやすくかっこいいので好きです。低めの声がかっこいいが、多くの箇所で高音のコーラスを入れているのも面白い。サビ “I wanna be like” で、ハモる音の数を段階的に増やしているのとかも良い。ブリッジのリバーブやハンドクラップも壮大でかっこいい。

歌詞について
Most とは「ほとんど」という意味だが「一般的」のようなニュアンスを含んでいる。みんなそれぞれのスタイルで生きていて立派、私もそうなりたい、といった歌詞。なりたい ってことは自分は違うと思っているってことになるんだよね。Haileeが歌うMost Girlsのポイントは二つ ①それぞれの生き方で生きている(一人として同じ人はいない) ②価値がある。①は否定できない、それぞれの人生を生きているんだから。否定できるとしたら②だろう。I wanna be like most girlsという言葉は何かしらの劣等感を感じさせる。

それでは和訳をどうぞ。

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Bon Appétit ft. Migos – Katy Perry 和訳と紹介

Katy Perry ラップトリオMigosとコラボしたヒップホップチューン

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「私が欲しいでしょ。たくさん召し上がれ。」

サウンドについて
バースの細かいバスドラム・ベースが印象的だ。序盤のサビには低音が入ってないし、バースではやや複雑なビートを刻んでいるので、パーティソングというよりクールな曲といった印象。しかし、曲終盤のサビでバスドラムが四つ打ちになり、バックトラックにも高音のオブリが入ってきたりと、盛り上がりを迎える。

歌詞について
料理に喩えて愛を語る歌は多い。どうしてもややセクシャルな感じになるよなあ。和訳で「Sweet tooth」と「Tooth fairy」って言葉が出てきて、あえて訳さずに書いたけど、それぞれ「甘党」「都合よくお金をくれる人(抜けた歯を枕元に置いておくとコインと交換してくれる妖精から)」という意味だ。この曲の話じゃないけど、料理に喩えて愛を語る系の歌で、私はYUKIの「just life! all right!」って曲が大好き。興味あれば聴いてみてください。

それでは和訳をどうぞ。

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J-Boy – Phoenix 和訳と紹介

Phoenix 落ち着いていて可愛らしいサウンドに囁くような優しい歌

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「全部君のせいなんだ。」

サウンドについて
静かで優しい雰囲気に可愛らしいクリアな高音の電子音が絶妙。囁き声のようなボーカルに緩急の少ないサウンドなのに、不思議なポップさを感じさせられる。面白いのはギターサウンド。メンバーにギタリストがいるからか、要所要所で趣味で入れたんだろって感じのギターサウンドがあって、DJ系のエレクトロポップにない面白さがある。あと電子音の音程が下がっていくイントロ、サビの終わりでも下がっていくフレーズが使われていて、ここからイントロ作ったのかなーとか考えると楽しい。

歌詞について
J-Boyっていうから、どんな男の歌なんだろうとか、JはなんのJなんだろうって思ったんだけど、まさかの “Just Because Of  You“。恋愛を引きずってる歌詞なのかな。フランスだからなのかなあ。文化に詳しくないからなのか、名詞の使い方とか、ちょっと難しい。ただ一番初めの歌詞はすごくわかりやすいし、ちょっと胸にちくっとくる感じが好きだ。

それでは和訳をどうぞ。

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Oh Cruel World – The Strypes 和訳と紹介

The Strypes ボ・ディドリーのようなブルース + UKインディなメロディライン

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「ああ、残酷な世界。惚れた女のために失っていく。」

サウンドについて
正直に白状すると、デビューした頃の彼らしかちゃんと聴いていなかったんだけど、超古典的なブルースのサウンドに乗っ取りながらも、彼ら独特の色が強くて面白い。「ブルースをやりたいミュージシャン」ではなくて、「ブルースがヤバイくらい好きな、好きな音楽をやりたいミュージシャン」なんだろうな、と。「古典的なブルースらしさ」への拘りじゃなくて、「好きなサウンド」への拘りだから自由なんだろうな、と。この曲では’90年代くらいのUKインディを感じさせるメロディラインや間奏に表れているだろう。

歌詞について
彼女は 太陽と月 を俺の世界に作ってしまった。ついでに鞭の音も! なんて可愛らしい詩なんだろう。どんなに好き放題に生きたくても、惚れちゃったら難しいのが男なんだろうね。たとえ相手にされなくても。太陽と月(四六時中存在する=彼女のことで頭がいっぱい)は交代で出たり消えたりするが、鞭の音はずっと響いているんだろうか。。笑

それでは和訳をどうぞ。

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Beautiful Ones – Hurts 和訳と紹介

Hurts 王道ポップス。切ないAメロ、ギターソロが超かっこいい。

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「俺たちは美しい一人一人なんだ。」

サウンドについて
初めて聴いてハッとしたのは2箇所。1つめは1番のBメロ。Aメロのバッキング、四つ打ちのビートとピアノの切ないコードの支えから投げ出されて、浮遊感を感じさせながら、サビに向けて盛り上がりを作っている。2つめはギターソロだ。静かになって、コーラスの美しい掛け合いから急にハイトーン・ディストーションギターのチョーキングである。痺れた。これがエモいってやつですか。

歌詞について
自信を持つように語りかけてくれる。落ち込んでしまう時は、まるで今が世界の全てのように感じてしまうが、乗り越えればいつだって時間が解決してくるものだ。「考えるのは一度だけ(Don’t think twice)」という歌詞がとても気に入った。

それでは和訳をどうぞ。

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Systematic – DJ Shadow feat. NAS 和訳と紹介

DJ Shadow MCにNasを迎えた単音ギターカッティングベースのトラック + 人間の感覚を忘れるな

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「それが俺の新しい表現だ。」

サウンドについて
クリーンギターの単音カッティングがリフとなり展開していく。ベースが入ってくるタイミングはかなり遅めだ。バースの半分から入ってくるシンセベースが最高にクールだ。1度と5度だけのベースフレーズが、なんとも言えないキャッチーさを生んでいるように思う。フックも前半はやはりベースが抜ける。この微妙な引き算の感覚がシンプルながら味のあるビートの隠し味なんだろう。

歌詞について
深みのあるリリックが評価されることも多いNAS。システムとはコンピュータに始まる現代文明全般を指してるんだろうか?昔はみんな「ブランド品」や「最高の音楽」、「金」が欲しいだけだったのに、世界がまるで変わろうとしている。3D(最もナチュラルな世界)を見るためにメガネをかけるのもよく考えると不思議な話だ。変わっていく世界の中で、NASの新しい表現は「目を閉じて、耳を塞いで、俺が言っている言葉を感じろ」。システマティックな世の中、情報を過度に重視する世の中が忘れかけている感覚をNASは覚えている。過去を忘れるな、リスペクトを忘れると昔に戻るぞ とNASはラップする。

それでは和訳をどうぞ。

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